今年2023年は、日本とASEANの友好協力50周年にあたる。私は、中小企業の海外展開支援(輸出、および拠点設立)を主業務としているが、一番人気はなんと言ってもASEANである。今回の専門家コラムでは、日本とASEANの歴史、関係を考えてみたい。

1. ASEANとは
(1)ASEANの誕生
 ASEANの正式名称は、「Association of South East Asian Nations(東南アジア諸国連合)」である。1967年8月に「ASEAN設立宣言(通称:バンコク宣言)」に基づき、地域の平和と安定や、経済成長の促進を目的として設立された。当初の加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国であった。
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(2)現在の加盟国
 上記5カ国に加え、その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟、現在ではASEANは10カ国で構成されている。なお、ASEAN事務局は、インドネシアのジャカルタに設置されている。

(3)最高意思決定機関
 ASEANの最高意思決定機関は、首脳会議「ASEANサミット」である。また、ASEANでは分野別の閣僚会議や委員会も開かれ、一年を通じ、さまざまな分野での政策協議が行われている。2022年11月11日のASEANサミットでは東ティモールの加盟が原則承認され、今後の正式加盟を目指している。

2.ASEANの現状
 ASEANの現状を、面積・人口・名目GDP・一人あたりGDP・貿易額の面からみると右図のようになる。
(1)面積・人口
 まず特徴として挙げられるのは、日本の12倍という広大な面積、そして日本の5倍という人口の多さである。将来の消費拡大を想定し、日本からASEANへの輸出を目指す企業も多い。
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(2)名目GDP・一人あたりGDP
ASEAN平均の一人あたりGDPは4756米ドルと日本の12%であるものの、この10年間では約2倍に増加しており、経済発展が著しい。ASEAN加盟10カ国では、シンガポールのように、すでに日本の一人あたりGDPを超えた国もあれば、これから発展を目指している国もある。加盟10カ国は国土面積、人口規模、政治体制、経済体制が異なり、多様性を秘めている。

(3)貿易額
 2018年の貿易額は3兆5001億米ドルと日本の約2倍である。ASEAN域内の貿易が多いものの、昨今では米国向け、中国向けが伸びている。

3.わが国とASEANの関係
(1)日本とASEANとの貿易額
日本とASEAN諸国の貿易額は、25兆円以上にものぼり(2018年)、貿易総額の約15%を占めている。かつては日本がASEAN諸国から原材料や農水産品を輸入し、製品をASEAN諸国へ輸出するという構造であった。その傾向は変化、1980年に輸入額の10%にも満たなかった日本のASEAN諸国からの製品輸入比率は、2018年には電気機器、木製品、衣類、服飾品などを中心に約67%を占めるまでになっており、貿易構造が高度化してきている。

(2)ASEANからの輸入比率の高い商品
 財務省貿易統計(2018年)から
ASEANからの輸入比率が高い商品をみると右図のようになる。
食料から素材、製品まで含んでおり、日本とASEAN諸国は、重要なビジネス・パートナーとなっているといえる。
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(3)投資先としてのASEAN
多くの日本企業にとって、ASEAN諸国は米国や中国と並ぶ主要な投資先となっている。2018年には、13,000社以上の日本企業がASEAN諸国で事業を展開し、ASEAN諸国で暮らす日本人は20万人を超えている。
 投資額については、2018年時点で、中国向け投資と比較し、ASEAN向けは約3倍の297億米ドルとなっている。
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(上図縦軸:単位:百万米ドル)

かつて「中国は世界の工場」と言われ、中国向け投資が集中した時代があった。もちろん、経済における中国の重要性は今でも変わらないが、「チャイナ・プラスワン」という経営判断によりASEANに生産拠点を設けた時代から、今では経済成長により消費地としての魅力も高まり「ASEAN向けに輸出したい」、「ASEANに販売拠点を設立したい」という中小企業からの相談が増えている。今後もそのような企業様のご要望を踏まえ、海外展開支援を行なっていきたいと考えている。

以上

【略歴】
● 三好 康司(みよし こうじ)
 中小企業診断士。前職の総合商社では、営業およびリスク管理業務で、中国、ベトナム、韓国、マレーシア、ミャンマー、タイ、インドネシアなどアジア・アセアン諸国に延べ150回の海外出張を経験。2015年、三好グローバル・コンサルティングを設立。すみだビジネスサポートセンター(東京都墨田区)の産業コーディネーターを務めるとともに、2016年より日本貿易振興機構(ジェトロ)の専門家として、中堅・中小企業約100社の海外展開を支援している。