グローバル・ウインド「オンラインでのJICA課題別研修(観光)について」(2023年1月)
国際部 藤田 泰宏
私は2022年度JICAの課題別研修事業(観光マーケティイグ・プロモーション-ニューノーマルに向けて-)に参画し、本研修のプロポーザル、予算作成から契約の履行・精算まで、また観光BCPの講義では講師を務めました。
コロナ前はJICA東京の研修施設に海外研修員を集めて研修をおこなっていましたが、一昨年度よりコロナ禍の影響で海外研修員の来日ができなくなり、全て海外とオンライン(Zoom)で行いました。
本研修は、2022年10月度オンライン(A)コース、11月度オンライン(B)コースを行いました。続いて1月~2月に、(A)(B)コースの研修員を来日させ実際に観光地を見学し、リアルでの講義やグループディスカッションなどを行う訪日コースが予定されています。全体としてハイブリッド研修となっています。
<Zoomの研修画面の様子①オンライン(A)コース、2022年10月5日~11月2日>
<Zoomの研修画面の様子②オンライン(B)コース、2022年11月7日~11月24日>
研修の概要
■主催者:JICA(独立行政法人国際協力機構)
■受託者:(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツ(WBA)
■研修期間:①オンライン(A)コース、2022年10月5日~11月2日
②オンライン(B)コース、2022年11月7日~11月24日
③(A)(B)訪日コース、2023年1月23日~2023年2月7日(予定)
■参加国:①アゼルバイジャン、エジプト、ジョージア、ヨルダン、モーリシャス、
パレスチナ、スリランカ、東ティモール、ザンビア(9か国)
②エクアドル、キリバス、メキシコ、ニカラグア、
セントクリストファーネイビス、セントルシア、トンガ(7か国)
■参加者数:各国1~2名 ①10名、②8名
■研修対象:各国の観光行政を担当する行政官(準高級クラス)等
研修の目的
開発途上国では外貨獲得、雇用創出、地域開発の観点から国際観光の振興に取り組む国が増加している。それにより、観光資源の持続可能な開発、外国人の受け入れ体制の整備等とともに、市場対象国・地域の実情を正しく理解し、適切なマーケティングと効果的・効率的なプロモーションを企画・実施出来る人材の養成が不可欠となっている。
このような背景のもと、潜在的な需要力があり、また成熟度の高い観光客市場を持つ我が国に対し、マーケティング及びプロモーション手法を含めた優れた観光事情に関する研修の要請は年々高まってきている。本研修は「観光振興とマーケティング」として各国の観光振興および観光マーケティングを担当する行政官、公的機関職員の人材育成を目的に実施するものである。
研修の進め方および内容
・Zoomによるライブ講義が基本であり、言語は英語、WBAの業務総括者が司会進行・ファシリテーションを行い、藤田は業務総括者の補佐役として参加した。
・講義中に使用した教材は、オンデマンドで視聴できるようにし、自習期間を設け予習/復習ができるようにした。
・海外直接投資促進に向けたビジネス環境整備に係る講義は、WBA社員、大学教授、支援機関担当者等から複数の講師が講義を分担して行った。
・質問について講義中はチャットで、質疑応答の時間ではライブで応答した。言語は英語で行った。
・現場視察動画の閲覧・説明について、オンラインでの遠隔研修では、予め受託者(WBA)が研修先企業等を訪問して日本語でヒアリングを行い録画に収録語、英語での音声と英文のテロップを挿入し、研修員向けの教材とした。
・講義後にはグループ別ワークショップ(討議)の場を設けた。日々の講義後に5~6名のグループに分け、日本人講師がファシリテーターとなって当日の講義について研修員に討議させ、討議内容を全員に報告した。
・知識の習得に止まらず研修成果として各国の観光マーケティング戦略およびそれに従うアクションプランの策定を行い、プレゼンの場を設けた。プレゼン資料の作成等について日本人講師が予め個別指導をおこなった。
・研修最終日には、全体を通して学んだこと、気づいたことなどについて、研修員と討
議の時間を設けた。
苦労した点
・海外研修員とのインターネットの接続:
時々インターネット回線が不安定となり講義の途中で切断されることがしばしばおこるので、FBメッセンジャーやWhatsAppで連絡と取れるようにした。ウェビナーでのプレゼン中にもZoomがフリーズした場合等には、プレゼンの順番を入れ替えるなど、臨機応変な対応が求められた。
・全体を通して、各国を同時にオンラインで繋ぎ、統一した行動を取ることは素晴らしいことであるが、テクニカルのちょっとしたミスも命取りになるので、準備はテクニカル担当を巻き込んで間違いなく準備することが肝要である。
所感
コロナ禍の影響で多くの活動がICT化し、いわゆるDXが加速している。JICAの海外研修員への研修事業も避けて通れず、手探りでの試行錯誤が続いたがリアルにはない便利さにも気づきがあった。
しかし「百聞は一見に如かず」であり2023年1~2月に渡りオンラインで知識を習得した研修員を来日させ観光地の視察を伴うハイブリッドでの研修が予定されている。今後はハイブリッドでの研修が定着するものと思われる。
以 上
自己紹介:
藤田 泰宏(ふじた やすひろ)2014年 中小企業診断士 登録
FMC フジタ・マネジメント・コンサルティング 代表
(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツ 理事 シニア・コンサルタント
(独)中小企業基盤整備機構 関東本部 企業支援部 アドバイザー
(公財)埼玉県産業振興公社 海外支援アドバイザー