グローバル・ウインド「ラオスでのJICA業務を経験して」(2022年12月)
国際部 田島 悟
1 はじめに
JICA専門家として、ラオスのプロジェクトに参加しています。去年までは新型コロナの影響でラオス渡航ができず、オンライン会議や書類作成だけを行ってきました。
今年になって3回ラオスに渡航する機会があったので、概要を書きます。
2 ラオスの概要
(1)政治
ラオスは政治的にはラオス人民革命党が一党独裁政治を行っています。人民革命党はマルクス主義を党の綱領としていますが、経済的には「一党支配体制下の市場経済化」を行っています。普段の仕事や日常生活の中では、社会主義の国であるという印象は全く感じません。タイやフィリピンと同様の通常の資本主義の国のような印象です。
(2)ラオスの日本企業
ラオスは海がない内陸国なので、輸送が不便であることなどが理由で大手のグローバル製造業は進出していません。日本企業の販売網はある程度発達していて、資生堂の大きな広告看板は日常的に目にします。
日本食レストランは首都のビエンチャンの中心部ではかなり多く、自分の出張中には約半分は日本食レストランで食事をしました。
(3)文化
ラオスは人口の67%が仏教徒であると言われています。首都ビエンチャンの自分が滞在していたホテルから徒歩10分以内くらいの場所に10近くの仏教寺院があり、土日は多くの仏教徒が寺院の中で座ってお祈りをしているのを見かけました。ラオスの仏教はタイなどと同じ上座部仏教(昔の名前でいうと小乗仏教)です。大勢の僧侶が修行の意味で鉢を持って食べ物や金銭の施しを受ける托鉢(たくはつ)の風景を多くの場所で見ることができます。人々が托鉢で僧侶に食べ物を託すとそれを僧侶が祖先に届けてくれると言われているので、多くの人々が托鉢をするのです。また僧侶は托鉢で受け取った食べ物を貧しい人たちに配るという習慣があるので、托鉢には貧富の差を削減する役割もあります。東南アジアでは物乞いをする人たちをよく見かけますが、ラオスでは物乞いを一度も見たことがありません。
3 ラオスの観光地
ビエンチャンは俗に世界一何もない首都と呼ばれています。土・日の休日が一度あれば、メインの観光場所はほぼすべて見ることができます。
(1)ブッダパーク
ビエンチャンの中心部からタクシーで40分くらいの場所にブッダパークがあります。
仏教に関するテーマパークといった印象で、大小多くの仏像が陳列されています。
全長40m近くの横たわった仏像(涅槃仏)もありますが、タイのバンコクにある涅槃仏と比べるとアンバランスな印象があります。
(2)パトゥーサイ(凱旋門)
パリの凱旋門をモデルにして建てられた戦没者慰霊塔です。上の階まで登ると展望台になっていてビエンチャンの市内が良く見えますが、今の時期は新型コロナの影響で展望台には登れません。
(3)タート・ルアン
黄金に輝く仏塔で高さは約45mです。仏塔にはブッダの骨が収められていると言われています。ラオス観光の中では見逃せないスポットです。ただし仏塔の中には入れないので、仏塔の周りにある多くの仏像などを見るだけになります。
4 仕事の概要
ラオスのエネルギー関連の国営企業で効率や品質を向上させるカイゼン業務を行っています。
自分はこれまでは製造業の製造現場でのカイゼン活動を主に行ってきましたが、今回は主に間接部門を対象にしてカイゼン活動を行う部分がこれまでとは違っています。
現場に行って製造現場を観察してカイゼン活動を行うことができないので、製造部門にも間接部門にも役立つカイゼン手法を100人以上の従業員に研修して、その後それらのカイゼン手法を実施するように各課でコンサルティングをしています。
仕事を行う中でラオスが一党独裁の社会主義国家であることを実感することがありました。
組織のトップ3(社長、副社長、マネジング・ディレクター)は、ラオス人民革命党内で出世してこの国営企業に派遣されたということです。この企業では、重要な経営上の意思決定(重要な投資計画や製品価格の決定)をする際は党と国のトップの承認を得なければなりません。この企業は毎年の決算が赤字で、財務上の数値を良くすることもカイゼン手法のコンサルティングの目標の1つになっています。
この国営企業は、昔JRが国鉄だった時の組織風土に似ています。自分が行うカイゼン手法の1つとして、ボトムアップマネジメントの組織文化を育てることも入っています。
田島 悟(たじま さとる)
1993年中小企業診断士登録。2008年に独立後、ブレークスルー株式会社を設立し代表取締役に就任。
JICA(国際協力機構)、APO(アジア生産性機構)等の専門家として、発展途上国での多くの研修やコンサルティングに従事している。
(連絡先)satoru.tajima@nifty.com