Global Wind (グローバル・ウインド)

国際部 グローバルウインド編集部

1.はじめに
中央支部国際部が毎年度オープンセミナーとして開催している国際部セミナー(2023年も誠意準備中)。今回は、2017年(開催)の国際部セミナー「実践への気づき!海外マーケティング徹底解剖」に登壇された『昭和ビンテージ(R)洋品店スミックス』店長大西澄江さんに編集部としてインタビューをさせていただきました。8月に続き後半になります。

2.コロナ禍で着想した「バーチャルショップ」
編集部(以下―)「前回では、ガイア夜明けの放映による反響は大きかったものの、コロナ禍で催事もなかなか開催が難しい状況の時に新しい事業を思いつかれ、知人の方に話したら、『そんなことできるわけない』といわれてしまったと伺いました。どんな事業なのでしょうか。」

大西さん「昭和ビンテージ(R)などスミックスのお洋服を着たアバターが接客するバーチャルショップ「昭和ビンテージ(R)洋品店 異次元店」です。」

-バーチャルショップでアバターが接客ですか!?今話題の「メタバース」の先駆けになりますね。

大西さん「当時はまだメタバースということは言われていなくて…。ただ、バーチャル上にあっても、昭和ビンテージ(R)にふさわしい高級ブランドのような店舗にしようと、また布の質感をしっかり表現したくて、誰もが知っている大企業などのお仕事なども手掛けている3Dのプロ集団に依頼をしました。なお、彼らによると『3Dにとてもこだわったのでメタバースではない』そうです・・・。DXの補助金を活用して、バーチャルショップ『昭和ビンテージ(R)洋品店 異次元店」を完成させました。」

-すごいご発想ですね!もっともご苦労されたことはどんなことですか。

大西さん「元々こだわっていた高級な雰囲気や質感をいかに出すかですね。お金を莫大にかければもちろん実現するのですが、予算には限りがあり…。一方、こだわろうとすると画像が重くなってしまって。当社は多くはスマホからのアクセスなので、スマホで開けなくなるとそもそもストアに来ていただけないというジレンマもありました。3Dのプロ集団の方々、スキャンをしてくださる専門家の方とも何度もやりとりをして実現しました。補助金事業の事務局のご担当の方も親身になってどうすればいいかを一緒に考えてくださり、発表の場をくださるなど応援をしてくださったのも心強かったです。」

写真1-1 バーチャルショップの入口写真1-1:バーチャルショップの入口

写真1-2 バーチャルショップのアバター接客写真1-2:バーチャルショップのアバター接客

-リリースをされて、反響はいかがでしたか。

大西さん「バーチャルショップ開店についてプレスリリースを発信しました。ありがたいことに日本テレビさんのニュース番組、週刊アスキーさん、ZOZO NEXT(ZOZOのメディア)さん、リサイクル通信さんなど多くのメディアから取材をいただきました。一方、海外からも3Dスキャンやバーチャルショップ、VRが好きな方についてシェアなど反応をいただきました。」

写真2 バーチャルショップのプレスリリース写真2:バーチャルショップのプレスリリース

-プレスリリースの反響がすごかったのですね!昭和レトロブームといわれていますが、その影響もあるでしょうか。

大西さん「はい。取材を受けるとき、昭和レトロブームのことや、SDGsということでリユースについても聞かれます。「昭和の魅力を伝えたい」「後世に残していきたい」とは創業当時から思っていたので、ありがたいことです。昭和レトロブームといえば、「西武園ゆうえんち」のリニューアルに、昭和レトロがテーマということでオファーをいただき、現在、園内でお洋服やアクセサリーを販売しています。その他にも昭和レトロブームで催事などでもお声がけをいただいています。」

写真3 昭和レトロブームをテーマとした催事の様子写真3:昭和レトロブームをテーマとした催事の様子

―昭和レトロブームの影響も受けられているのですね。たしか、香港のテレビにもご出演されたそうですね。

大西さん「はい。2022年1月に密着取材を受けました。香港では日本の文化に興味がある方々がコロナで日本にいけない『日本レス』になっていると。日本を身近で感じようと取材をしてくだりました。」

-日本レス、ですか。昭和レトロブームが海外にも広まっているのですね。国境を越えた行き来がコロナ以前よりできなくなった中、文化の発信は新たな海外展開の形になりそうですね。

大西さん「そうですね。この取材を通じて、香港ではプリンアラモード、クリームソーダが流行っているなど、昭和レトロに関心があることが分かったのは意外でした。この放映がきっかけで香港の商業施設とのお話が進んでいます。」

-コロナ禍でDX化してバーチャルショップを開店、そして昭和レトロブームにのって、まさに成功モデルですね!

大西さん「いえいえ、失敗や反省もあります。例えば、香港テレビの放映日の前に、Instagramでは香港で通じる簡体語のハッシュタグで表現しないといけなかったのですが、それに気づかずうまくハッシュタグで発信できなかったので、香港でのPVが思うように伸びなかったのはもったいなかったです…。」

-実際、やってみないとわからないことですね。チャンスをつかんで実践されている大西さんならではですね。なお、バーチャルショップの展開やメディアへの取材の他に取り組まれていることはありますか。

大西さん「2つあります。1つは、バーチャルショップ開設と同時に、姉妹サイト「すみれ」のECサイトを立ち上げました。すみれとは昭和20~40年代のお洋服がスミックスとすると、昭和50年代以降の大量生産が可能になった後のお洋服で、お値段も手が届きやすい形の設定にしています。すみれのECサイトは自動翻訳機能をつけて、英語、香港、台湾、欧州など7か国語対応(自動翻訳)しています。」

―7か国語対応で世界の多くの方に届けられるのは楽しみですね!

大西さん「また、私たちの昭和ビンテージ(R)はそれぞれ世界にひとつしかない一点もので在庫を抱えやすくなりますし、常設店舗がないので、運命のひとつしかないお洋服とのお嫁入り(購入)をするには限界を感じていました。そこで同業や異業種の事業者の方にお会いして一緒に何かできないかということを考え、バーチャルショップのご紹介とあわせて4月に東京ビッグサイトで開催された「ファッションワールド」(展示会)に出展しました。

写真4 ファッションワールド催事の様子写真4:ファッションワールド催事の様子

-展示会のご反応はいかがでしたか。

大西さん「とてもよかったです。3日間で300社名刺交換しました!コロナが開けたとは言えない状況で悩んだことがありましたが、思い切って出展してよかったです。その中には大型商業施設からのポップアップ(催事)の出展やメディアからのお声がけもありました。展示会主催者が台湾、香港、中国の250社に対し、ライブコマースをしてくださったのですが、それによる海外からのアプローチも10社ありました。展示会主催者の担当の方からもすごくよい反応だったといっていただきました。」

―今後が楽しみですね。最後に、今後されていきたいことやメッセージがあればお聞かせください。

大西さん「昭和ビンテージ(R)洋品店スミックスではまだ言えないことも多いのですが、今進めているプロジェクトを1つ1つ形にしていきたいと思っています。また、私は取材や対外的には、昭和ビンテージ(R)洋品店スミックスの大西でされることが多いですが、元々デザイナーとしても活動していて、スミックス(R)のお仕事で注目されると同時に、デザイナーでもお声がけいただくことが増えました。クライアントの方からはスミックスの立ち上げからの経験で事業側の気持ちを理解してくれること、世界観を示すのに説明いらないといわれ、話が早いといわれます。どちらとも私にとっては大事な仕事です。いただいたご縁を生かしてまいりたいと思っています。」

―『昭和ビンテージ(R)洋品店スミックス』店長とデザイナーというパラレルキャリアを実践しご活躍の大西さん、今後のご活躍が楽しみです。コロナ禍の状況でも積極的に行動し、時流やチャンスをつかみ、生かされている姿勢に編集部も大変勇気づけられました。ありがとうございました。

■グローバル・ウインド編集部
東京都中小企業診断協会中央支部国際部の診断士が編集長の元、リレー形式で国際にからむコラムをつづっております。ご感想やトピックのご要望など、お待ちしております。
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