1.はじめに
 こんにちは!ご覧いただきありがとうございます。
 私は中央支部の広報部でカメラを持ち、撮影と取材でさまざまな方とコミュニケーションをとっています。
 また、普段の仕事では、病院や福祉施設の経営改革・改善で延べ2000人以上インタビューしてきました。このような私が「対話による組織改善の方法」をお伝えします。

 さて、皆様の組織はイキイキ活動していますか?
 もし、そうでないとしたら解決方法があります。特別な道具もいらず、誰でもできます。
 それは、「スタッフの話を徹底的に聴く」ことです。
 「なあんだ」「もうやっているよ」という方、効果は出ていますか?
 効果の出る「対話による組織改善」の方法について解説します。

2.病院改革の経験から一般企業に活かせること~私の経験から~
 私が前職に入ったのは平成19年。ちょうど自治体病院改革の真っ只中でした。自治体病院というのは、県立○○病院や市立○○病院のような経営主体が自治体である病院のことです。
 経営問題があまりにも大きくなりすぎてしまった病院を再生するために、どうしたら良いかを探っています。この中で最も効果的だったのが、スタッフ全員のインタビューでした。といいますのも、経営で大きな問題になる組織にはこのような共通点があるからです。

 「好ましくない赤字」を出す病院の傾向
【収入面】
 ■ 経営戦略・戦術が政策の変化によって大きくぶれる病院
 ■ 経営判断に時間がかかりすぎる病院
 ■ 経営と運営が分離している(現場の声が届かない)病院
【費用面】
 ■ 患者数のわりに豪華な建物の病院
 ■ 目先のコストを下げることに終始する病院
 ■ 給与体系等肝心なことが曖昧模糊としている病院

 こちらは、病院改革で私がかつて作った資料です。
 この内容は、病院だけが抱える問題ではなく、一般企業にも当てはまる内容も含まれています。
 特に、経営と運営が分離している(現場の声が届かない)というのは、「あるある」ではないでしょうか。

 私は、辛抱強く「現場の声」をきちんと聴き、良い提案や重複するキーワードを盛り込んで、答申案を作りました。その結果、経営改革委員会で答申案は採用。その後、答申として内容が実行され、今ではイキイキと働ける場になっています。つまり、改革・改善は成功しました。
 私の行っているのは、それほど難しいことではありません。

 では、組織改善のためにどのようなことをしているでしょうか。
 「対話による組織改善」の具体的な手法を説明します。

3.スタッフに傾聴する
 まず、「傾聴」、つまりインタビューします。スタッフにインタビューして、問題点や課題を探り当てます。
 「普段からスタッフと会話している」という方。それは、1対1で行われていますか。他の人がいると遠慮してホンネを話せなくなってしまいます。
 また、スタッフの話を遮ったり、自分ばかり話したりしてしまうのはインタビューにはなりません。
 インタビューの主役はあくまでもスタッフです。
 インタビューでは、よく聴きましょう。私の手法では、話し手のスタッフは7~8割、聞き手のこちらは1~2割の感覚で話します。ひたすら聴くことに集中しています。

4.インタビューが成功するための前提
 インタビューの前提として「信頼関係」がモノを言います。
 信頼できる人には何でも話せますが、信頼できない人には口を閉ざしてしまうからです。
 信頼関係は「共感」が積みあげられることで成り立ちます。なぜなら、「共感」できることがあれば、相手はこの人に話そうと思うからです。

 例:話を深く聴けた「共感」の実例
 ・ 好きなキャラクターのぬいぐるみをカバンにつけていて、それを見た見知らぬ人から話しかけられた。話してみたら、お互いそのキャラクターが好きだとわかって意気投合。
 ・ 相手の経歴を聴いていて、たまたまお互い簿記2級を持っており、さらに工業簿記の理論的なところが好きだとわかり、インタビューがスムーズにできた。
 ・ 20代の頃「日本酒の八海山が好きです」と自己紹介したところ、日本酒好きの大先輩から近づいていただき、世代、性別、役職を問わず「飲ミュニケーション」で盛り上がった。
 ・ 先輩や上司が以前似たような仕事の失敗をしていて、対策のアドバイスをもらえた。
 ・ インタビューで相手と同じ仕事をしていて、顧客から同じような理不尽なクレームを受けたことがあるとわかった。どうやって対応したか語りあえた。

 例でお気づきかもしれませんが、「同じものが好き」「似たよう経験をした」というようにお互いの共通点が「共感」につながります。
 さらに「相手に興味を持つ」「相手を理解しようとする」ように意識すると、相手が話しやすくなります。

5.肯定することを心がけよう
 どうしても、インタビューで自分と違う意見が出ると、否定したくなります。
 しかし、その意見を否定することは、組織改善のために本当に良いことでしょうか。
 現場と経営の視点はまったく異なります。現場はより精密に近く、経営は大きく遠く。
 だからこそ経営が成り立ちます。視点の違いは大目に見ましょう!

 また、否定されると、人はもう話したくなくなります。相手が話さなくなってしまったら、インタビューは失敗です。
 自分とは違う意見が出たとき、私は「なるほど、その視点はなかったです」「興味深い、もっと聴かせてください」と返します。つまり、相手に「先生になった感じ」を与えるのです。
 人は、人に何か自分で思いついたものを教えるとき、いつも以上によく話すからです。
 この手法は、小さなお子さんが自分で「何をしたいか」を訊くときにも使えます。

 「教えてください」は、人を機嫌よく話させる魔法の言葉です。

6.インタビューを経営改善につなげる
 インタビューを終えたら、出てきた「キーワード」をまとめます。
 異口同音とはよく言ったもので、本当に別の人から同じキーワードが出ることがあります。
 こちらをもとにして改善を行います。

 ある病院では、「がんばる人が報われない給与制度」がキーワードでした。
 古い制度を抜本的に変えず、継ぎ足し、継ぎ足し。その結果、あまりに複雑になりすぎてしまい、公平な評価でないと現場の不満になっていました。
 給与制度を思い切って誰もがわかりやすく、「頑張る人が報われる給与制度」にしたところ、離職を希望する人が激減。
 何とか、宝物である人材の確保を続けられました。

 インタビューをして、その後に何も変わらなければ、スタッフはがっかりします。
 スタッフは「何かが変わる」と大きな期待をするからです。
 このスタッフの期待を実現し、組織改善を成功させるためにも、インタビュー後に行動を起こすことが必要です。

7.まとめ
 問題が起こったら、まず、話を聴いてみましょう。
 スタッフは言い訳OK!いろいろな人に存分に話してもらいます。
 そのインタビューをもとに「キーワード」を掘り起こし。
 「キーワード」から解決のための行動を起こします。
 組織改善の成功に必要なのは「自分と違う意見を受けとめる」ことです。
 耳に痛い話は「良薬は口に苦し」と捉えてはいかがでしょうか。
 改善をするという覚悟と行動が成功につながります。

【自己紹介】
 星 多絵子:中央支部 広報部 副部長/執行委員
 15年間にわたり、医療・介護・福祉の経営コンサルタントとして活動。経営改革・改善で延べ2000人以上のインタビューを行っています。
 現場から話を聴き、経営者の変わりたい想いを実現することを得意とします。いわば「現場と経営者のパイプ役」。
 現場を動かす、経営者の想いを伝えるという点で、業種業界問わずコミュニケーションを活性化して経営改革・改善を実行し続けています。