専門家コラム「オンライン商談導入企業の現状と、活用のポイント」(2021年5月)
昨年からのコロナウイルス感染症により、Zoom、Teams、Skype for Businessなどを活用したオンライン商談や、オンライン面談の機会が急激に増えている。今では、私も海外とオンライン商談する機会も出てきている。一年前には、ほとんど考えられなかったことだ。今回は、企業におけるオンライン商談導入の実態をみるとともに、対面商談とは違う難しさのあるオンライン商談のポイントについて考えてみたい。
1.企業のオンライン商談の導入実態
(1)導入している企業の比率
皆様の会社では、オンライン商談を導入されていますか? 2020年10月から11月にかけて行われたエン・ジャパン株式会社の調査によれば、65%の企業が「導入している」と答えている。【図表「全体」参照】(有効回答数374社)
(2)業種別に見た導入率
業種別にみると、導入率の高い業種は「IT・インターネット関連」92%、「広告・出版・マスコミ関連」85%、「コンサル関連」83%となっている。一方、導入率が50%を下回っているのは、「不動産・建設関連」45%、「流通・小売関連」42%、「金融関連」25%であり、業種によってバラツキがあることが分かる。
(3)オンライン商談導入のきっかけ
同じ調査では、オンライン商談を導入したきっかけは、やはり「新型コロナウイルス感染拡大を受けて」という回答が88%を占めている。2020年3月以降に導入したと答えた企業が82%であり、コロナ禍により、急速にオンライン商談が増えている。
2.オンライン商談の注意点
私がオンライン商談を行なった経験も踏まえ、注意点を考えてみた。
(1)事前準備
オンライン商談では、対面と違い相手の表情が見えにくく、また、目の前で商品やカタログを見てもらうということも出来ない。そのため、商品PR資料を準備し投影する、効果的な会社・商品のアピール方法を考えるなど、対面商談以上に事前準備をしっかり行う必要がある。さらに、自社における事前のアクセスと操作の確認、相手企業とのアクセス確認も重要になってくる。
(2)言葉の選び方、表情
オンライン商談では、前述の通り、商談相手の表情が見えにくいため「熱意」を伝えにくい。また、思ったより言葉の意図も伝わりにくい。さらに、対面であれば感じないことでも、オンラインでは言葉の使い方により、相手にきつく伝わってしまう場合もある。なるべく分かりやすい言葉を使い、言葉の選び方に気をつける必要がある。リアクションについては、「熱意」を伝えるため、身振り手振りは多少オーバーなくらいでもいいかと感じている。
(3)論理性のある商談運び
対面での商談であれば、世間話や冗談から入り相手をリラックスさせてから本題に入るということがよくあるが、オンライン商談では、そのような手法は取りにくい。また、画面越しの商談は、長時間になると思ったより疲れるものである。そのため、テンポよく、企業や商品内容を的確に伝える論理性のある商談運びが重要だ。これは、前述の「事前準備」の重要性にも繋がってくる。
3.商談を効果的に進めるには
(1)五感に訴える商品の場合
例えば食品や飲料のように五感に訴える商品である場合、対面商談であればその場で食べてもらう、飲んでもらうといったことが可能であるが、オンライン商談ではそうはいかない。五感に訴える商品については、商談日までに前もってサンプルを送り、オンライン商談時に実際に味わってもらうといった準備も必要になってくる。
(2)画面共有機能の活用
事前準備の項で「商品PR資料」の準備が大切であることをお伝えしたが、画面共有機能を上手く活用し、相手にアピールできるようにしたい。画面越しに現物サンプルを映しても、あまり商品がよく見えないケースが多々ある。商品写真も含め、効果的に画面共有できるよう、操作に習熟しておくことも重要だ。私の知っているある企業は、1分程度の自社をアピールするミニ動画を作成し、商談で流している。
オンライン商談であれば、午前は九州の会社、午後は北海道の会社と商談するということも出来る。時間とともにコストの削減も可能だ。ワクチンが普及しコロナウイルスが終息した後でも、対面商談とオンライン商談の併用は続くのではないだろうか。もちろん、ビジネスにおいて人間関係は非常に重要であるため、実際に会って話すという機会はなくならない。重要商談は対面、ルーティンな商談はオンラインといった時代がくるような気がしてならない。
以上
【略歴】
● 三好 康司(みよし こうじ)
中小企業診断士。前職の総合商社では、営業およびリスク管理業務で、中国、ベトナム、韓国などアジア・アセアン諸国に延べ150回の海外出張を経験。2015年、三好グローバル・コンサルティングを設立。すみだビジネスサポートセンター(東京都墨田区)の産業コーディネーターを務めるとともに、2016年より日本貿易振興機構(ジェトロ)の海外専門家として、中堅・中小企業の海外展開を支援している。